書くことはないけどそこそこ酔ってて書きたいという気持ちがあれば何か書けるだろう、と思ってキーボードをたたき始めて五分で絶望。まいみさんと柴田さんが好きだという以外に書きたいことなどない。柴田さんは例の南国の恐竜の名で呼ばれてあい久しい御仁で、その名は自分の飲み屋でのあだ名と同じなので

7/22 にこんな下書きを保存していたらしいのだけどたぶん酔ってたせいで覚えてない。いま自分の携帯電話のストラップはその南国の緑色の子どもを食べるかいじゅうで、柴田さん含めそいつらのいるところに帰りたいけどパスポートが無い。違うなにかを探して明日から。

寡聞にして存じなかったんですが、世の中にはアイドルについて熱く語る blog は数多くあるのですね。考えたらそういう「芸」あるいは「文法」あるいは「文体」あるいは「生き様」があっても当たり前なわけで、そう考えると一朝一夕のまいみファンがそこに太刀打ちできるわけもない、というか、思ったより道が混んでいたので引き返したいような弱気。単純にまいみまいみ書くのが楽しいなあと思ってやっていたのだけど、なんだろう、どの道も無数の烈が三千年前に通過しているのだなあ。アイドル破産のひとおもしろいなあ。ということで一過性の萌え萌えを終了して普通のサラリーマンとして適当に飲酒。明日はおがまなさんがベイの始球式に登板だよ(未練)。

柴田さんと最後に会った日のことが忘れられない。立ち飲み屋に行くと柴田さんはきっと後から現れて黒じょかを分け合ったものだが、おれは知らなかったのだ、メロン記念日はまだ活動していた。その焼きとんと焼酎の旨い店のカウンターで何度となく穏やかに飲み交わし、時には仕事の話もしたはずなのに、なぜか、メロンは解散したものと思い込んでいた。そして何かの拍子に「メロンが終わった今」と口にしてしまった時、柴田さんの顔色が変わったのをさすがにおれも見逃さなかった。ふと自分の勘違いに気づき動揺したおれが口ごもっていると、彼女はふっと表情を和らげ、しかし視線をゆっくりと落として何かを低く呟きはじめた。聞き返そうとするおれを制するように、彼女はおもいきり背中を反らして酒を飲み干し、その反動で勢いよくカウンターに額を打ちつけた。おれのみならず店中が静まり返り、声をかけられないまま、その、両手を飛行機の尾翼のようにうしろへピンと伸ばし、地の底から響く声で歌う彼女を見ていた。ビィーマイワイフ、ビィーマイワイフ…。ロック…シタイデス…。

黒じょかで強かに殴られて気を失うのはそれから間もなくのことだった。目を覚ますと彼女の姿はなく、店内のあちこちでうめき声が聞こえていた。頭を触るといやなぬめりを感じて手を見ると赤黒く、映画やドラマのようだなと余所事のように思った。天井が回るのを必死にとどめながら起き上ったおれは、目の前の壁を見てまた倒れそうになった。赤茶けた砂壁に、どす黒い液体で「最強で最狂で最響」。当店の秘伝のタレとやらを台無しにされたとむせび泣く店主を横目に、おれはその壁の字から目が離せずにいた。メロン記念日柴田あゆみ、彼女とおれとの間には、香ばしい味噌ダレで書きなぐられたその八文字が、いまや永遠のような距離で横たわっているのだ。酒を飲めばきっと出会えた彼女との今生の別れを思い、おれはただ立ち尽くすばかりだった。

その夜を思い出しながらアブサン。まいみは空にダイヤモンド。あるとき柴田さんに強烈に惹かれたおれを、まいみはニコニコと笑って見ていた。今も、Bello! ではいつもより小柄に見えるから楽だと笑っている。でもアブサン。サイバーは怖いからアブサン。あかん眠くなってきたで。アルテミジアアブサンカプリシューズ。72度。目をつぶったら二度と君も来てくれなくなるのは分かっている。でも72度。思えばなんで君に会えたのだろう。義務感と焦燥感以外からは何もしようとはせず、強迫観念と絶望と希望をキャンディのようにしゃぶり続ける子どものようなおれが、なぜ君のような素晴らしいひとに出会えたのだろう。それを疑ったときから別れははじまるのだということも分かっている。目をつぶったらさよならだよまいみ。明日からまた一人で飲むさ。

最高気温 33℃( -ute )

Lunch Time Speaking:

めぐる季節 恋の季節

夏の陽気に浮かれて調子のよさそうな顔をしているがね君、斜陽産業の「大反響」は畢竟、苦笑失笑の残念賞だよ。自己批判第三章を参照しつつ落ち込みランチタイム Yes Yes Y'all. とりあえずビールでいいかな紳士諸君(便所飯なので応答なし)。

めぐる季節 故意の季節

夏の陽気に浮かれて素知らぬ顔をしているがね君、我々の悲しみは君の魂を青くひび割れた水晶のような夜。いや失敬、唇が詞を奏でて止まない。要するに何が言いたいかというとだね、私の若い頃は二日酔いで営業に行ってそこで寝かしてもらうなんてことは日常茶飯事でね、君ら若者にはその覇気が足りない。破天荒さが足りない。いっぺん家庭を持ちたまえ。守るべきものがあると男は変わるぞ。甘えるんじゃないよ、もういい加減一人前だろうがこの小僧っ子が。いっぱしの口をききゃあがって。一昨日来やがれ。

Q. 以上のような説教を見知らぬ男性に施されたのですが、どうすればよいでしょうか。
A. 相談内容には無意識の迸りを装った衒いが感じられます。このような相談をいただくたびに、ああ、今年も故意の季節だなあ、と感慨深く思う次第です。いわゆる夏厨は半年 ROM ってろです(夏コン MC にて、まいまいの言)。

めーぐる季節 恋の季節

夏の陽気に浮かれて哀惜の念にかられているようだがね君、さればまずはうろ覚えの引用から入ることを許してほしい。

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、この袈裟! 袈裟! 馬鹿! くそっくそっくそっ! 袈裟! 袈裟! 袈裟! 袈裟! このっこのっ! いやだ! いやだ! 止まれ! 止まれ止まれ止まれ! 誰もいない本堂に響く、布を引き裂き刺し貫く音、やがてそれも静まり、荒い息遣いだけが聞こえる中、ぼろぼろの袈裟を抱きしめ、死んだ坊主の帰らざるを思い泣いた。

ここでいう「死んだ坊主」が何を意味するか、日記の書き手たる私はもはや覚えていない。そう、これは私の日記からの引用だ。その私は無人のお堂でひとり袈裟を引きちぎった覚えもなければ坊主の知人もないため、なんらかの寓意をこめてしたためたのだろうと思われる。あるいは予知の類だったのかもしれない…帰らざるめーぐる、その季節の。あるいは帰らざるかんな。帰らざる日々。嗚呼まいみよ、頼むからその類まれなるスピードで、おれを置いていかないでくれ。

気付いたらおれのみならず日本中が夏だった。遠ざかっていくまいみが飛行機雲を描き、空はよく晴れて昼休みの終わりが近い。トムヤムクンの食い過ぎで腹が痛い。

夏が好きな 僕らだから

なんちゃらマスター

私は 眞鍋けをりです! イエイ!
トレードマークはネクタイ、終了
明るく下向き 近距離通勤
一日一回 ファビョります 遺影!

(セリフ)
自己アピール、自己分析、
日経新聞のスクラップ、
社会の成員たるために
それは本当に必要だったか


眞鍋けをり 24歳です
取引先は 苦手です
上司も苦手で 人見知りだし
穴を掘って 埋まってますぅ!

(セリフ)
酒が飲めるかという問いは
アセトアルデヒドの多寡を尋ねているのではない
歯車としての自覚
社会性、歯車としての自覚


イエイ! 眞鍋けをりです!
貧相だけど がんばります!けど
とりあえず今日は 帰りますっ!
そして明日から寝ています…

(セリフ)
何もできないというが
何かできる人間がどれだけいるだろうか
何者かに憧れるだけでいいはずもないが
では何者になれるというのか


みんなのアイドル けをりちゃん♪
人畜無害で 無味乾燥
何なのその顔 面識あるよ?
二度目の 名刺交換ね♪

(セリフ)
下僕、社畜、社会の犬、
なんとでも言いようはあるが
大多数の凡庸な人間にとって
その擬態の陰で何を為すかがより重要ではないか


眞鍋「趣味のための趣味」
眞鍋「狂気のための狂気」
眞鍋「あのぅ、私は」
眞鍋・眞鍋「雪歩はだまってて!」
眞鍋「雪歩というオルターエゴ」
眞鍋「id:nuff7は満ち足りない」
眞鍋・眞鍋・眞鍋「Hunger?」
眞鍋「節操!」
眞鍋「ならば何をすべきか」
眞鍋「生活者でしかないのならば」
眞鍋・眞鍋・眞鍋・眞鍋「そこから何かを掴み出すしかないのではないか」


一歩漸進!漸進!たまに呆然!そんな時もあるさ
何もせずに懊悩!憧憬!次は一笑!できるといいのだけど
それが眞鍋のやり方だから


名前は 眞鍋けをりです
出世には 興味ありません でも
稼げるチャンスが あるならば
口に糊するために がんばります くっ

(セリフ)
分不相応な大役だと思い
肩肘張って仕事をする
大抵の場合それは自分以外の人間にとって何の意味も価値も無く
しかしその無関心のお蔭でのうのうと生きていられる


ボクの名前は けをりといいます
ダンスは 結構得意です へへっ
おかげでモテモテ 嬉しいけれど
現実ならば なおいいのに…

(セリフ)
気合根性という精神論が批判されることは多いが
それは気合至上主義者がかつて占めていた「役」が社会から失われたことを意味する
彼らは彼らで、歯車としての役割に忠実だった
その適応力は批判されるものではないはずだ、お前には


眞鍋けをりと 申します
おっとりしてると いわれます
運命の人は どこかしら あと
将来のビジョンは どこかしら

(セリフ)
年長者を敬うというルールは社会の隅々に行き届いていて
同じように理不尽とも思える数々のルールが歯車を動かしていて
その意味で、厳密に無意味であるものはなく
それが分かっているのならなぜお前は


そうです私が 眞鍋けをり
目耳が二つで 鼻ひとつ
口は語らずに 酒流し込み
喉が灼けるわ 寝耳に妄!

(セリフ)
かつてそうでなかった自分を悔やむこと
過去は常に「取り返しのつかない事態」であり
それをただただ悔い、輝ける他者に憧れ妬み、何のアクションも起こさずに不貞腐れる
でも自分以外の誰かを羨ましく思うこれは片思いの変形なのだろうか


Hit Me 生活!生活!時に泥酔!クビにされない程度に
とりあえず逼塞!窒息!すべて必然!
つまらないことでも
みんなまとめてなんちゃらマスター


Hit Me 生活!Hit Me 生活!(生活・・・)
  Hit Me 生活!Hit Me生活!(生活・・・)


けをりの名前は 眞鍋けをり
24歳なの 凡庸だよ?
エレンのためなら なんでもしちゃう!
ねえねえ円高還元して♪

(セリフ)
ワイルドターキーからポートエレンへ至る嗜好の変化は興味深いが
それとてアシスタントが変わったという一語で退けられるのだろうか
SBRに見られる絵柄の変化、勇次郎の色艶の増進、
それらを楽しむことは、「アシスタント」に言及するとき不可能になるのだろうか


骨です 肉です けをりです
幽玄にあそび アイドルしてるよ
それでもカルマは おんなじです
当たり前だよ あっ、そうか!

(セリフ)
ねえねえけをり?
ギターやってみる?
う〜ん、なんか面倒くさいかも
そっか、じゃあ、やめよう!


眞鍋「何者かでありたいと切望する一方で」
眞鍋「何者かとして固定されることを恐れている」
眞鍋「酒場でもオフでもきっと眞鍋は名乗らない」
眞鍋「あふぅ、どうすんの?」
眞鍋「結局のところすべてを保留したいのか」
眞鍋「なにのワナビーか? ワナビーなのか?」
眞鍋・眞鍋「凡庸にかまけるか? 積極的な無為か?」
眞鍋・眞鍋・眞鍋・眞鍋「最終的ってどの時点で最終なんですか?」


Hit Me 生活!生活!たまに呆然!そんな時もあるさ
無理せずに感動!反応!次は敢闘!できるといいのだけど
それが眞鍋のやり方だから

Hit Me 生活!生活!時に盲目!不貞腐れないように
とりあえず転換!変換!すべて横断!つまらないことでも
みんなまとめてみんなまとめてみんなまとめて生きていました

ふねだすぞ

id:nuff7 五月五日の手記より(副題:模倣からなる習作)

今日も明日も休み(今日と明日だけ休み)なので昼から飲むべきでありそれならば公園にでも行こうかと思ったら生憎の雨。近所の立ち飲み屋も三時からだしなー、どうしよっか? と Google に話しかける寸前で「山家」を思い出した。そうだ、山家に行こう。

山家(やまが)とは渋谷区は道玄坂のふもとに煙ブリブリであるところの居酒屋。文学に造詣の深い諸兄ならたちどころに、情報に首輪を架された青年が「仲間は嫌いだが絶対にリタイアしない馬鹿だ」と吐瀉物まみれの店内で噛み締めた店として想起されるだろう、あの山家である。なぜその山家をいま思い出したかというと、24 時間営業なのだ。昼の一時からぶりんぶりんだ。かかる飲み屋につきづきしいドレスコードを意識してなるべくよれよれのスーツに身を固め、髭を剃らずに出かける。渋谷駅に着くと柴田あゆみさんが既に待っており、休日だというのにスーツを着たおれを見て「おしゃれですね」と困ったように笑った。

山家に着き、黒ホッピーセットを頼む。と、柴田さんも「じゃあ同じものを」と言う。「初体験ですよ、ホッピー」とまた笑う柴田さんに、だいたいの作り方を教えて乾杯。「…結構いけますね」とつぶやく柴田さんの目は不敵だった。

コブクロ手羽先に刺身をつけて盛大に飲む。日頃のお酒はシビアで実際的な話が多いという柴田さんは、ここぞとばかりに漠然とした話題を投げかけてくる。
「私は結局体育会系のコミュニティに所属しているわけですけど、文化系って怖いイメージあるんですよ。こう、こだわりが細分化されてそうというか、こちらの教養とかストックが足りないとたちどころに糾弾されそうな」「そんなことないと思いますよ。そもそもは知りませんけど、最近のほとんどの〈文化系〉を名乗る団体は、どちらかというと〈文化〉よりもそのコミュニティの居心地を愛しがちです。なんにせよ、ただそういうコミュニティに属したいだけであれば、いくらでも受け入れ先はあるはずです」「そうでしょうか。彼らはとにかく〈文化〉に厳密で貪欲で、だからこそああやって知識や教養を深めることができているのではないでしょうか」「でも柴田さん、そんな教養人がどこかのコミュニティを代表して出てきているのに会ったことがありますか。結局のところ強いのはソロです。メロンが終わったいま、グランジアイドルとして柴田さんもソロとして強くなってほしいと、僕は思います」「はは、ありがとうございます」。柴田さんに言いながら、おれは自分自身にも言い聞かせていた。ソロとしての強さ。

おれの深刻な表情を見透かしたように、柴田さんは「眞鍋さんのおうちに行きましょうよ。新しいパソコン、見せてください」と言ってくれた。さっそく会計を済ませて我が家へ向かう。月のはじめに購入したパソコンは新しく、ぬらぬらと艶めかしい黒さで佇立していた、デスクの上で。「眞鍋さんの前のパソコンは大分古かったですよね。たしかメモリが 256MB で」「嫌なことを覚えていますね。youtube の動画ですら途中でフリーズしたのはいい思い出です」「今なら思う存分、眞鍋さんの嫌いなニコニコ動画が見られると」「ええええ、勝手に見てください」柴田さんは嬉々としてその動画サイトにログインして、うっとりと『赤いフリージア』を聴く。自分だってこのサイトが嫌いなわけじゃないんです、ただコミュニティ性というものとどう折り合っていいかわからず、と口に出しかけたのを制するように、柴田さんが振り返って「便利な世の中ですよねえ」と笑う。今日の柴田さんはよく笑ってくれる。笑うというのは攻撃的な行為で、だからこそ優しい人には辛いこともある。

終電も近くなったので家を出る柴田さんとともに駅へ向かうと、途中で柴田さんが「…すみません、トイレ、ないですか」と小さな声で言う。ちょうど行きつけの立ち飲み屋があったので入り、柴田さんをトイレへ促して自分はカウンターの一角に座を占めて「一人です」と店員に告げる。「とりあえず黒ホッピーください」

戻ってきた柴田さんに一応酒をすすめると、「明日があるので」とそそくさと立ち去る。交通費くらい出してあげたほうがいいだろうかと逡巡する間に見えなくなるほどのスピードで柴田さんは。何の仕事だろう、メールして訊いてみようかな。…いや、訊くまい。ホッピーはあっという間に空き、焼酎に移り、そこから先のことは覚えていない。眞鍋さんはブレーキが無いのがたまにキズですよね、と柴田さんの声でいつか聞いた。日常に、ほんの少しの柴田さんを。ブレーキを。

グッド・バイ

雑誌で久しぶりに見た坂本氏(ゆら帝)の外見が記憶よりかなりパンチ効いてたので、思わず「しびれ」を引っ張り出して聴く。ジャンガジャンガジャンガジャンガジャンジャジャンジャンジャジャン(『夜行性の生き物三匹』)。このアルバムをよく聴いていた頃はあまり考えなかったけど、この後のゆら帝にさらに顕著になっていくループ感は雑誌がいうようにたしかにミニマル的かもしれない。ましてや前作=3rd の頃なんて、当時のぼくはふつうのロックの子だったので細かいことはよく分からなかった。いまでも分からないが、当時はひどく分かっていなかった。なにも分かっていなかったのだった。

あるバンド、それは外野から見れば鉄板でビジュアル系なんだけどファンに言わせれば凡百のお化粧バンドとはわけが違うテクノクラートたち、つまりまあビジュアル系バンド(便宜上そう呼ぶしかないではないか!)、そのフロントマンはのちにソロでニューウェーブ方面に傾倒していくのだが、そんな古いドイツ映画から名をとったバンドを愛する女性と、当時ぼくは付き合っていて、でも細かいことの分からない自己耽溺のひどいぼくはすぐだめになった。一緒にいた短い時間に、インターネットに無縁の彼女のためにぼくは p2p でそのバンドの入手困難な音源を手に入れ、CD-R に焼き、手書きの曲リストをつけて渡した。彼女はそのリストを見て僕の字が好きだと言い、ぼくはぼくが死んだらそれ見て思い出してほしいと言い、そういう発言の鬱陶しさなどまるで省みなかった。ただぼくは目の前の彼女をよく見てはおらず、ゆら帝はふつうのロックバンドだと思っていて、ビジュアル系は全部ビジュアル系だと思っていて、ただ独白だけを日々重ねていた。そこに意識的になろうという思いが若者を blog に導いたのだろうか。彼女の目の届かないインターネットという砂漠へと、若者を。

という物語を頭にひらめくまま上書き保存していく日曜の午前、考えてみればお別れの神社は今日と似たような天気で、よく晴れた日なのが悲しかったのを覚えている。そういえばいまのこの気持ちはあのときの心持ちによく似ているようで、ならばと口の中にへばりついた昨夜の酒を洗い流すべくラム酒をロックでオッスオッスしているのも繋がりがあるようだ。思い出すことと思いつくことに客観的な違いが無い以上、現にあったことなんて誰が知るだろうか。ただ感傷はどこかからやってきて、あなたのことは頭に浮かぶ。装丁家を夢見ていたあなたはお元気でしょうか。ぼくは本をつくって売る会社の、片隅で生かされています。あなたが進みたがっていた道の端にいます。だからというわけじゃないけど、あの頃あなたが聴いていた曲が、今更ちょっと好きだったりする。

君には新しい僕ができて
僕には新しい君が
新しいふたつの君と僕には
新しい暮らしが

ありがとう よろしく 新しい僕に
君に会えてよかった

あなたは笑うだろうか。どこかから来た感傷、あのころ二人で何をしたろうか。桜が散る季節にはもう気持ちは離れていて、それでも彼女に騙されて p2p で不正ダウンロードさせられたことだけは後々まで憤りを残した、まるで枝に残る花弁のように。そのブーレーズシュトックハウゼンの未発表音源を彼女は大喜びで受け取り、ぼくの手書きの曲目リストにキスをして、でもゆら帝はただのロックバンドだとなじったけどぼくは反論なんてしなかった。オフ会で会った彼女はぼくのサイトなんか見てなくてでもすごくかわいかったんだ。いつしかブーレーズはビジュアル系に傾倒してあなたは神社になったけど、その少しの寂しさもラム酒で流しこんでぼくは生きている。シュトックハウゼンがグラスに氷を落とす。彼女がぼくの blog を好きだと言う。

買った CD など

「ハイファイおじさん! あ、それ ハイファイおじさん! 教師は地獄で目を醒ますー」
「ハイファイおじさんだ! みんなアンテナを低くして逃げろ!」
「なんだチミはってか!」

相変わらずチケットのとれないあのバンドはこないだ映画版デメキングのイベントに出てたそうですが、見に行った人によると対バン相手の地方ラッパーが良かったそうで。だからというわけじゃないけど、またぞろ日本語ラップに向き直りつつあります。とりあえず『サイタマノラッパー』は観ようと思う。

高校時代に利用していた CD ショップで働いていたというひとがトラックメイカーとして CD デビューしていたので買った。いいですこれは。若手の人らしいので、おれが通っていた七、八年前にはいなかったのかもしれないけど、でもなんかにやにやしてしまった。

今日お店で試聴した音源が立派で、また作っているひとが神奈川出身の 21 歳だというので慄いた。なんと ahmad が参加していたよ…当然すごくかっこよかったよ…なにあの曲…。とても応援したい。きょうは買えなかったけど今度イベントか何かで直接買いたいと思った。すごいひとはいるものだなあ。

id:nuff7 はチンケな生活者だ。クリエイターでもなんでもない。そんな立場から{ではあるが|だからこそ}、音楽や物語や酒を、少しでも嘘の無いかたちで愛していきたいと思っている。自分が好んで内に摂り入れるものについて、出来る限り真剣に考えたいと思っている。以前は blog でそれがやれると思っていた。それが頓挫した今となっては分からないけど、ただの言葉遊び以外のことはしたいと常に思っているので、好きなものについてちょっと考えて書くという作業も悪くないかと思う。酔っ払いの感傷なのかもしれないけど、まあ「考え込む前にやっちまえ」ってのがここ二年間の歯車生活で学んだことだったので、web 的美意識よりも自分の実感を優先させて書き散らしていくのも悪くないかと思う。悪くないかと思う。言い訳じみてていい感じ。