PJ ツアーファイナル、四度目の現場。結論だけ書くと最高だった。以下には結論以外を記す。

私よ。この私のちょうど一年前の時間を生きる私よ。お前は知らない、お前から見て半年後、 2010 年の 4 月、お前があるアイドルの歌に、感受性という感受性すべてを根こそぎかっさらわれることを。それが怪盗少女だ。怪盗少女はお前の何かを盗み、倍にして返してくる。お前の蔵は、怪盗のよこしてきた米俵でパンパンに膨れた。お前は笠も貸していない地蔵に、過分な贈り物をもらって、面喰い、これはどういうことかと、そう、お前は怪盗に会いに行くことになる。怪盗の CD を買い、インストアライブの整理券を手に入れる。タワーレコード渋谷店の地下室で、百人超の観客のひとりとして、お前は怪盗の歌や踊りを目の当たりにし、そしてお前は屈するのだ、その歌声、挙動、語り、握手、笑顔、ハイタッチ、そのすべてに。イベント終了後、お前は同行者と飲みに行き、互いに打ちのめされたまま盃を交わすだろう。青装束の美しい怪盗に握られた手を、ただぼんやり眺めながらまたビールを注文する。彼女は若さに似合わずしっかりとした筆致で、お前の名前をシングル CD のジャケットに、彼女の眉のように太いマジックで、記してくれる。お前はそれから何日も、その CD を肴に飲むだろう、ウイスキー、焼酎、日本酒、ワイン、酒は選ばない、ただそのジャケットを、お前が何万遍と書いたお前の名前、しかしそれはこれまでになくお前の胸を騒がせる呪文となり、お前は、本末転倒にも、この名前、彼女が書いてくれたこの名前に生まれたことを心から感謝するようになる。なんということだ、お前は、否、そのときの私は、全身の骨という骨を彼女に捧げ、なお満足することはない。お前はその後、何度かのイベントに参加し、彼女の名を叫ぶだろう。

しかし私よ、お前のその熱は、時を経ずして別の少女に移っていく。しかし恥じることはない、私よ、お前が次に恋することになる赤装束の彼女は、とびきりの女の子なのだから。彼女はそのすぐれた身体能力を遺憾なく発揮してくれる。ステージ上では常に暴れまわる。飛ぶ。廻し蹴る。マイクを持たせるとそれほど語りは巧くない、ただその飛び、踊る様が、お前を惹きつける。エネルギーの塊、太陽がそこにいる。お前はいつしか、ステージを見ながら、青よりも赤に目をとめるようになる。彼女のえくぼの落とし穴に、まんまと落ちてしまう。茶畑のシンデレラに門限はない、お前は四六時中、彼女に鼓舞される。気がつくと、買った T シャツは赤装束のものだったりする。『最後のかぶき者』。背に大書されたそれを着て、11 月 23 日、つまり今日、お前は代々木公園に行く。それはセカンドメジャーデビューシングルに伴うツアーの最終日、お前がこれまで見てきたステージとは比較にならない規模と時間で展開される、一大イベントだ。この間秋葉原で参加したイベントでは、たしか十曲も歌わなかったはずだが、アンコールに応えて紫装束が一人現れ「いつもいつもアンコールがあると思うなよ!」と啖呵を切った挙句「お前らやる気あんのか!」「ももクロちゃんと天下とる気あんのか!」「それでは聴いてください」と結局歌ってくれたこともあって、お前は心の底から満足し、やはり同行者と陶然としたまま盃を交わす。しかしこの日は桁が違う。17 曲だ。私よ。この私のちょうど一年前の時間を生きる私よ。お前は知らない、秋の代々木公園、お前はそこで、十も年下の女子の歌と踊りに、涙すら浮かべることになる。全ステージが終わってメンバーが挨拶をする、そこで紫装束の娘は、感極まって泣き出す。私よ、お前は、そこでもらい泣きをこらえられない。紫装束は言う、「だってみんな、すごい笑顔で見てくれてるんだもん」。お前は笑顔で、しかし目頭は熱いままだ。

時間をさかのぼろうか。SE とともに猫耳を付けた六人がステージに現れ、まず二曲を歌う。千人を優に超す観客はみな笑っている。そして芝居だ。五人は黙って立っていて、その間を縦横無尽に動きながら、黄装束が素晴らしい女優仕事を魅せる。『自分を含む初期からいるメンバー三人とともに、ユニット結成時よく路上ライブをしていた代々木に久しぶりに帰ってきた猫』を、彼女は演じる。「(後から加入した)この三人誰?」と彼女は言う。黄装束は、二年前の記憶のままそこにいる。「かなこ、こんなに小さかったっけ?」「れに、なんでこんなスレンダーになっちゃったの?」「よく動くカエルちゃんはちょっとあっちにどかしといて」「誰この子? ハーフ?」ファンの誰もが一度は口にしたことがある事実をずけずけと申し立てていく。観客は大笑いしながら、一体感をかみしめる。彼女たちについて考えたすべてを、彼女たちもやはり同じように考えていたのだ、と、黄装束の愛おしい名演技に、観客は笑って泣く。あのときの代々木にいたももクロじゃない、と駄々をこねる黄装束に、赤装束が言う。「あの時(メンバーとして)いた二人はもういないの」「ていうかそのあとの五人体制ももう無いの」と、客から見ても無遠慮なほど語る。たまらない。諭された黄装束は突然眠りに落ちる。ここまでのすべては彼女の夢の中の出来事だったという設定。ほかの五人が、眠りこける黄装束を起こそうと話しかける。妹キャラを奪いつつあることを、桃色が詫びる。キャラを散々変えられてリーダーすら降ろされた紫が、「でも私だって、今は違うキャラでここに立ってるんだよ!」と叫ぶ。観客は笑い、そして目頭を熱くする。やがて芝居は終わるが、全身の夢のページにしおりを挟まれまくった千人は、そこからはただ歌い、声をあげ、握手会に長い列を組む。右手の甲に、一度握手したという印のハンコを押される。ガチャピンとムックの「よくできました」だ。お前は、その文言を彼女たちにこそ贈りたく思う。そう、お前はもちろん彼女たちと握手した。

私よ、一年前の私よ。お前が彼女たちに会って、代々木に行くまで、ちょうど半年しか経っていない。しかしお前は、代々木に行くべきだ。そして、笑って泣いて、やはり同行者たちと飲みに行き、カラオケで PJ を歌い、「ピンキージョーンズを歌ってくれた皆さんありがとうございます!」と特典映像に歓声を上げる。

歌詞を記そう。ただし、上述の芝居で黄色装束が「あの頃みんなでビラ配ったじゃん! 肖像権とかフリーだったじゃん!」と叫んだように、今の彼女たちは、立派に成長し、人気を獲得しているからこそ、安直にその持物を拝借することは避けねばならない。なので、私が彼女らと一緒に歌っているほうの歌を記す。

オイオイオイオイオイオイオイチャパチャパオイオイオイオイオイオイオイかなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑イー・アル・サン・スー・ウー・リューかなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑ないないかなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑オーライかなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑パンパーンかなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑アーンかなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑かなこぉ→→↑↑↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→→→→↑→→→→→→→→→→→↑→→→→→→→→→→→↑→→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑→↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑→→→→↑→→↑↑→↑↑↑↑→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→→→↑→↑↑→↑↑→↑↑↑↑↑→↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑→↑→→↑→→→→→→→→→→→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→→→→→→→→→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑↑→↑→→↑→→↑→→↑→→↑→↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑→→↑↑↑↑↑↑↑↑↑

私よ。ひとつ忠告しておくと、iPhone アプリのももじゅーるで遊びすぎると、バッテリーがもたない。誰のことも恨んだりはしない、あるいは、誰でも幸せに生きる権利があるんだ、それらを略して DD 、戻してダイアモンドダスト、さらに引き延ばしてスターダストプロモーション。DD 。私よ、お前はきっと幸せだ。

http://www.youtube.com/watch?v=mhDPmiRGG6s
the other three なるなつかしい表現も今の℃には許される。なぜならその三人がゴリゴリ歌っているのだから! 岡井ちゃんがこんなに前に! そしてまいみはもちろんセンターだ。ありがとうありがとう。これが閉じた花園の花鳥の夢だとは知りつつ、しかしすばらしい。サビ後半はプレジャートレジャーミクスチャーのあの二人組の某曲にちょっと似ている、そこがまたたまらない。帰りに食べていくのが蕎麦であれば個人的にはストーキングも辞さないレベルだったのだけど、それは構わない。全体にどこかで見たような光景の繰り返しなのがすごくいい。いずれすべては複製だ、繰り返しだ。その覚悟のうえで、この曲のひたすら安定したベース音は夢をがちっと閉ざして踊らせる強度を有している。本格派のインテリが攻めてきたらすべては終わりだ。ドラムンベースの云々、ダンクラの云々を言われたらすべてがシャボン玉だ。しかし、いまのわれわれは「やめろ!」と言える。これまでであればしぼんでいたわれわれの闘志は、「手柄とりあげないで!」と叫ぶ声帯を取り戻した。横隔膜を震わすベースラインを取り戻した。たたかう。まいみ。おひさしぶりね。「ひとのせいにしないで」。そうだね、

帰依出家割礼できない外付け信仰ワナビーとしての自分の身の処し方を考えるうえでもやはり信仰一般のことをもう少し勉強しなくてはならない。と決意表明した瞬間にホテルのベッドの枕元のギデオン聖書がフラッシュバックし、次の刹那その光景を明日の出張先のホテルで見るであろうことも搭乗便予約内容その他の文字情報として脳裏に浮かび、せっかくの缶ビール弾幕が此岸河原にしゅんしゅんと染み込んでいくのを感じさせられる。つくづく人民軍にはいられない性質だと自覚して興ざめする前に今夜の息の根は止める

缶ビールで酔いを回すのは大事業だ。

遠くない将来地震があるのを分かってて東京を去らずに住み続けるのと同じで、パウロが彼岸にいるのを分かっていながら碌々と日々を過ごしている。イデオロギーで動くには、あまりにも心が鈍い。しかしわが事ならいざ知らず、赤子は政治も思想も解さないが、それらによってあっけなく命を奪われうる。ならば指をくわえて見ている法はないではないか。赤子かわいさに此岸に執着するのはもうやめだ、飛び出せ青春! が右の扉、いまや危うい此岸も赤子かわいさで改造思想、このまま終わると思うなよ! が左の扉、さてせっかくだからどっちを選ぶ。

革命という可能性を念頭に置くと、ジレンマの所在はよりはっきりしてくる。革命を起こす側と起こされる側があって、パウロはきっと前者として教義を組み立て、信仰をつのるだろう。仮に自分が後者でしかありえない場合、自分の解釈ではどうしたって自分が後者でしかありえない場合、渇望してやまなかったパウロは彼岸へ己は此岸へと引き離され、しかし彼岸に焦がれるかというとさにあらず此岸へこそ己と分かち難い何らかの感情を覚え、そうするうちにも己のための念仏は彼岸から朗々と響き、それは他ならぬ己をこそ敵とするラ・マルセイエーズとなるだろう。

それでも、パウロはおれのためのパウロなのではないかと思う。彼岸からガチでおれを殺そうと石を投げてくるパウロかもしれないし、此岸を核の炎で蒸発させようとするパウロかもしれないけど。それでも、そこから何かを感じなければおれは河原の石になってしまう気がする。

しかしパウロはゴリゴリの伝道者だから、いまの社会というフレームワークともきっちり折り合いをつけた信仰を語ってくれるんだろう。するとやはり問題は世の中というよりは聴き手たる自分の側にあり、パウロが成したように世間というやつと自分というやつとを折り合わせるための実践が無いことには話にならないようだ。世間はこの場合、理念とか理想とか目標とかでもいい。自分の果たすべきロールを自分で解釈し把握し定義してしまった以上、パウロの教えがどうあれ、それが自分にとっての世間であり、それがパウロの教えに反したとき、「パウロを渇望しつつそれに反するドグマで自らを慰めている」人は、どうすればいいのだろう。

おれのためのパウロがいないだろうか。生きるためのみちを分かりやすく解説してくれるキートン山田としてのパウロ。あと欲をいえばパウロさえいれば大丈夫、という世の中であればなおよい。テーブルマナーが分かっていてもスマートにワインを注文できなければアウトなのが西洋食堂の鉄の掟なのと同じで、自分なりに納得のいく理屈を知っていても振る舞いを伴わなければ意味が無い、という世の中ではパウロの力も半減。机上の空論だけで生きていける世の到来を希う。